2016年10月31日

太陽と月の詩 214号 巻頭言

心に届く言葉
東京都 大竹麗子



「声はうそをつかない」・・心ない言葉、つまり心とは違う言葉を言ってしまうことはあるが、声は決してうそはつかない。音声で言葉を伝えた時、表意(意味)が届くのではなく、その言葉を発している人の内側の真意(本当の気持)が届くのだ。

 物語を語る者にとっては、実に重要な事だ。

「美しい」とか「暖かい」を意味する言葉を発しても、その人の内側に、本気でその思いが内在していなければ、何度「美しい」をくり返しても「美しさ」は届かない。一字一句違わない原稿を二者が語った時に、一方はただの報告文のようになり、一方は、語った内実が深く確かに聞き手の心に届く、と言う事が生じるのもこのことによる。

 1932年に国連からの依頼で、アインシュタインとフロイドが「人はなぜ戦争をするのか」を書簡にて考察し合ったことがある。

 結論は「それにはその国の文化の在りが大きく関わっている」だった。

文化という言葉は茫漠としているが「人を人としての幸福へ向かわせてゆく広く大きな力である」と言う意味を内包する。人類の最大の文化遺産は言語である。

 その言語文化の最高峰であるストーリーテラーの我が国の内実はどうなのだろう?

日本ではまだまだ社会的なストーリーテラーの歴史は浅く余暇的趣味としてとらえられている。

臨床心理医が認められていなかったように児童文化という世界も、文化という名称だけはしっかりついているが、確かな質的内実と広がりを、他のマスメディアに匹敵する程、もてているのだろうか? 子ども達への美しい言語文化を大人達は本気で考えてきたのだろうか?と問いたい。

 だが、かつて臨床心理医が賢明に汗を流し実績を積み上げて、社会にみごとなプロフェッショナルの仕事を実現させたように、かつて朝日新聞紙上にて天野祐吉氏が「この国の将来に最も大事な事は、〃心に届く言葉の関係〃を本気で築いてゆく事なのだ」と叫ぶように言っていた様に、今、全国の子どもの文化に関わる人達が 本気でこの道を「仕事です!」と言える高みまで深めてゆき、必ずや地上の星となることを私は信じて、自分自身もこの道をリスペクトして歩み続けてゆきたい。


                     (会員 おはなしかご主宰)




posted by 語り手たち at 21:18| Comment(0) | 太陽と月の詩
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