2017年10月11日

10月のお話

ススキの花嫁さん


片岡輝・さく 花の内雅吉・絵


 の太陽にやかれて、野原のみどりいろの洋服は、もうすっかり色あせて、黄色っぽくなっていました。林の木の葉っぱたちのなかには、はやばやとオレンジや赤や金色の秋のファシッョンに衣替えをすませたおしゃれさんも見られます。

 十造は、朝から宝探しで大忙しです。ズボンの4つのポケットは、クヌギやコナラのドングリでパンパンですし、シャツの胸ポケットには、いろとりどりの落ち葉がぎっしりつまっています。

 細い木の枝には、モズが突き刺したカマキリがミイラになっていました。十造がお墓を作ってカマキリを埋めて林からでてくると、あたり一面、真っ白い穂をつけたススキが秋の風とラインダンスを踊っていました。


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 十造が、逃げ回るススキの穂をつかまえようと、爪先立って手をのばしたとたん、いきおいあまって、ススキの上にひっくりかえってしまいました。

 「ククククク…」

 笑い声にハッとして、辺りを見回すと、ネコジャラシのげじげじひげをつけた女の子が目の前に立って笑っています。

 「きみだあれ? どこの子?」

 「わたし、かんな。十月の子よ」

 「ふ〜ん。ぼくも十月生まれ。十造っていうんだ」

 十造は、宝物のドングリをポケットから出して、かんなのためによく回るコマを作りました。おかえしに、かんなはハトムギの実で数珠玉の首飾りを作って、十造の首にかけました。

 「女の子がネコジャラシのひげをつけるなんておかしいよ。ほら、こっちの方がよく似合う」

 十造が、ススキの穂でかんざしを作って、かんなの髪にさすと、チャラチャラ…とすてきな音がしました。かんながつけていたネコジャラシのひげは、十造の鼻の下で、立派なちょびひげになりました。

 「かんなちゃん、はなよめさんみたい」

 「十造くんは、かんなのおむこさんね」 


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次の日、ちいさな花婿さんは、お庭でコスモスをつんで、ちいさな花嫁さんに贈るかわいい花束を作りました。一緒にプレゼントする星の形をした金平糖を入れたマッチ箱が、ポケットの中でさっきからコロコロと弾んだ音を立てています。


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 「かんなちゃん、どーこ?」

 十造の声が、ススキの原っぱを駆け巡ります。どんなちいさな物音でも聞きもらすまいと耳を澄ませても、「ククククク…」というかんなの笑い声は聞こえてきません。十造のほっぺに涙が2本の線を描きます。どこかでモズが、甲高く笑っています。

「おじいちゃん、かんなちゃんのお家をしらない?」

 おじいちゃんは、何を勘違いしたのか、

「神無月というのはな、日本中の神様が出雲の国にお集りになって、縁結びの相談をなさるんじゃ。神様がお留守になるので、神が無い月、神無月というんじゃよ。わかったかな? わからんじゃろうな」

 「わかってないのは、おじいちゃんのほうだい!」


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 十造は、町の方へ走って行きました。途中で会ったお米屋さんのおじさんが、かんなの家を教えてくれました。                 

「こんにちは、かんなちゃんいますか?」

「ええ、おりますよ。かんな、あなたにかわいいお客様ですよ!」

 「あら、だれかしら?」

 花嫁姿のお姉さんが、奥から顔をだしました。角隠しの白さが十造の目にしみます。(あ、郵便局のおねえさんだ!)


十造は、だまってコスモスの花束と金平糖の入ったマッチ箱を花嫁さんに渡すと、後を振り向かずに駆けだしました。

 「きょうは、いそがしいな。もうひとつ、コスモスの花束をつくらなくっちゃ!」

 ススキのちいさな花嫁さんがみつかるといいですね。


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posted by 語り手たち at 21:17| Comment(0) | お話の国
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