2018年04月02日

お話の国

おはなしの国 シリーズ2 詩を語る1


明日輝く星たちのはなし

片岡輝 


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 明日の語り手たちを育てるプロジェクトが語り手たちの会の創立40周年を記念して、チーム横浜のメンバーを中心にスタートし、34日、詩人の谷川俊太郎さんと作曲家の谷川賢作さんをお迎えして長津田のみどりアートパークで、小学3年から保育士までの12人の語り手が、すばらしい語りを聞かせてくれました。その中の6人は、福島県田村市の女子小学生でした。地元の言葉で地元に伝わる昔話を、かわいい和服を着て語った姿が強く印象に残りました。


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横浜を中心にして首都圏から集まった6人は、ミラン・マラリーク、安房直子、こがようこ、大竹麗子、谷川俊太郎の作品を身振り手振り、表情豊かに語りました。誰もが夜空にきらめく12の星のように輝いていましたが、谷川さんの詩「えをかく」を語った松崎宝夏(小5)さんと、マラリーク作「あなのおはなし」を語った大井田佳穂(小4)さんの二人に「ブルースター」賞が贈られました。二人の語りは、さながら妖精が「語るパントマイム」を演じているかのようで、聞き手をうっとりとさせました。


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 かねてから、もっと詩を語りで取り上げてほしいと願っていた私は、明日の語り手たちから勇気をもらって、日ごろから書きためている詩を、「お話の国」で紹介して行こうと決心しました。決心とは、少々大袈裟ですが、語り手のみなさんのレパートリーに加えていただけたらこんなにうれしいことはありません。「青い地球にことばの種を!」を種の一つに詩もぜひ加えてください。


 今月の詩は、「わたしが生まれた日」です。


わたしが生まれた日


わたしが生まれた日

その日は朝から雹が降り

おまけに雷まで落ちてきて

わたしがおぎゃあと産声を上げると

天から鬼の子がやってきたと

大騒ぎになったそうな


ところが角も生えていないし

眼に入れてもいたくないほど

可愛い赤んぼだったので

天からの授かりものと

大喜びになったそうな


わたしが思うに

これは祖父か祖母が

作った話に違いない

初孫を抱いて小躍りしている

二人の姿が目に浮かぶ


生まれて今日まで

いろいろなことがあって

父母にはたくさんの

苦労と心配をかけてきた

いまだって口げんかがしょっちゅう


照れくさくってなかなか素直になれなくて

バースデイケーキのろうそくばかりが増えていく

こころのなかで叫びたい

いのちのくさりを受け継いで

たくさんの愛に包まれて

わたしの今日がここにある


*この詩は、神坂真理子の作曲で同声合唱曲として全日本合唱普及会から楽譜が出版されています
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2018年02月19日

2月のお話

 銀河へ飛んだ樹々


片岡輝・文 

花之内雅吉・絵


 高い丘の上に建つ樹々の家の二階の窓から、まるでハリネズミの針ように、細くとがった枝を空に向けて背比べをしている雑木林が見えます。

 2月生まれの樹々の名前は、如月(きさらぎ)のき≠ニぎ≠とって、丘を取り巻く樹々の字を当ててつけられました。しっかりと大地に根を張って、たくましく育ってほしいというお父さんとお母さんの願いがこめられているのです。

 樹々は、さっきから空の雲に頼み事をしています。雲はいかにも困ったという顔して、「そりゃ無理というものですよ。いくらぼくが頑張っても昼を夜にすることはできませんね」


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々は、いつもより1時間でも1分でも早く夜にしてほしいと、雲に頼んでいたのです。

 リビングから、ケイタイでおしゃべりをしているお母さんの声が聞こえてきます。「2月って、ほんとにあっという間ね。2月のことを逃げる2月っていうんですってよ。あら、もうこんな時間!急いでお夕食の支度をしなくっちゃ。お宅のおかずはなーに?あら、うちもおなじにしようかしら

 お母さんが長話をしているうちに、空が暗くなって、樹々が首を長くして待っていた夜がやってきました。

             


 ごはんは、樹々の大好きなカレーライスでした。

 「あら、樹々ちゃん、お変わりは?」

 「もう、おなかいっぱい! ねえ、はやくかげえあそびしてよ、ねえ、はやく!」

 「あなた、ほんとにパパそっくりでせっかちなんだから。じゃあ、リビングの電気を消して日本間の障子の前に座ってちょうだい」

 樹々がスイッチを切ると、お母さんの姿は障子の向こう側に消えていて、「こんこんこんこんばんは」と、キツネがぺこりとおじぎをするのでした。

 「キツネさん、こんどはネコにばけてみせて」

樹々が頼むと


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ツネがくるんとでんぐりがえって、「にゃーおん」と、もうネコになっていました。

 ネコは、しっぽをぴんと立てて、キッチンの方へと歩いて行きます。

 「あ、カレーのおなべをなめちゃだめ!」

 すると、「うー、わんわんわん」イヌが飛び出してきて、ネコに大きな口をあけて吠えかかります。ネコはサッと姿を消しましたと、その時です。とつぜん、雲をつくような大男が現れ、今にもイヌを踏みつぶさんばかりに迫ってきます。樹々は、思わず大声で叫んでいました。「イヌをふまないで!」

 「ははははは、ぼくだよ。お父さんだよ。ただいまー」

 「おかえりなさーい! びっくりしちゃった」


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の夜、樹々はなかなか寝付かれませんでした。窓に映る影を見るともなく見ていると、「バサバサバサ」と何かが羽ばたくような鋭い音がして、大きな影がベッドに横になっていた樹々の上に覆いかぶさりました。

 「樹々ちゃん、さ、いそいでぼくの背中に飛び乗って!」

 樹々は跳ね起きると、翼を広げている夜鷹の背に飛び乗りました。

 樹々を乗せた夜鷹は、力強くはばたいて、星のダイヤモンドがきらめく夜空に向かって舞い上がりました。


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鷹が、ふわりと舞い降りたのは、金色に輝く月の上でした。クレーターの中からウサギが現れて、樹々とぴょんぴょんダンスを踊りました。月では、誰でもトランポリンの選手みたいに軽々と飛び上がることができます。

 樹々が調子に乗って月の砂漠を思いっきり蹴ると,体がぽわぽわぽわんと浮き上がり、まるで手がそれた手毬のようにとんでとんで、気が付くと、銀河のはずれに独りぼっちで浮かんでいるのでした。

 樹々が途方に暮れていると、星のかげからキツネやネコやイヌがあらわれ、けらけら笑いながら、おいでおいでと、手招きするのでした。


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posted by 語り手たち at 22:58| Comment(0) | お話の国

2018年01月09日

1月のお話


ひゅういやろのお正月


片岡輝・文 

花之内雅吉・絵


ひゅういやろのの、ひゅういやろ、とうとうたらり、とうたらり……お正月になると、にぎやかなお囃子にのって、さんばっさんのお人形が薄暗いお宮の中からニコニコと笑いながら現れて、ツーンと鼻が痛くなるような冷たい風に吹かれて、ぶるぶると身ぶるいをしながら、まるでうなるような、うたうような声で、「まずまずお舞いたまえ……」とくりかえして踊る人形芝居を、お父さんの肩車に乗ってみるのが、睦子のお正月の楽しみでした。今日は、大晦日。明日は待ちに待ったお正月です。


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ころが、冬将軍が朝から暴れ始め、吹雪が強いので、街から山道を登って来る路線バスが運休になってしまったのです。睦子のお父さんは、山の仕事が暇な間は、街で働いていて、いつも大晦日にたくさんのおみやげといっしょに帰って来るのです。

 睦子は、窓ガラスに鼻のてっぺんを痛くなるほど強く押し付けて、お父さんを乗せたバスが峠を越えて走ってくるのではないかと、粉雪の分厚いカーテンの向こうをにらみつけています。


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ひゅういやろ、ひゅういやろ……上のお兄ちゃんが吹く笛の音が、吹雪の中に吸い込まれていきます。

 「この分だと、さんばっさんも今年はお休みになるかもしれんぞ」

お兄ちゃんは中学生で、さんばっさんのお囃子で笛を吹く係です。

 「お父さんも帰ってこれないし、さんばっさんもお正月も今年は来ないんだろうか?」

睦子がしょんぼりしていると、おにいちゃんがこんな話を聞かせてくれました。

 「昔、きこりが、さんばっさんの祭りに燃やす薪をとりに山へ入っていった。すると


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将軍が、おれたちを追っ払って春の女神を呼び寄せるとは、ふとどき千万。そんな祭りは吹き飛ばしてくれよう≠ニ、びゅうびゅうぼうぼう雪交じりの嵐を巻き起こし、きこりを凍え死にさせようと、やっきになって攻めて来たそうな。きこりは、腰まで雪に埋まりながら、しびれて、もうなんにも感じなくなった両手に斧をしっかりと握りしめて、がっきがっきと木の幹にさんばっさんの人形を彫っていったんだと。一番叟は美しい春の女神、二番叟は千年も万年も生きたおじいさん、三番叟は福々しい福の神さまであったんだと。きこりが、さんばっさんを彫り終えたとき、きこりは、もう雪ん中にすっぽりと埋まっていたそうな」


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「ね、それできこりはどうなったの? さんばっさんのおまつりはどうなったの」

 「きこりがさんばっさんを彫り終えたとき、冬将軍は、吹雪の詰まった袋の中身をぜーんぶ使い果たして、さんばっさんにはとてもかなわんと、しっぽをまいてにげていったんだそうな」

 「あー、よかった!」

 睦子は、すっかり安心して、こたつの中で眠りこんでしまいました。


ぎの朝は、吹雪もやんで、うそのように

 おだやかな元日でした。睦子が目を覚ますと枕元に新しい羽子板と、きれいな羽根が並んでいます。

 「あ、お父さんだ! さんばっさんが冬将軍を追っ払って、お父さんを連れて来てくれたんだ

!さんばっさん、ありがとう!」

 ひゅういやろうのひゅういやろう……お兄ちゃんが吹く笛に、鼓がとうとうたらりとうたらり……と、にぎやかに加わって、さんばっさんがお宮から出てきました。お父さんの肩車に乗った睦子が、「ありがとう」と、お辞儀をすると、さんばっさんが三人そろって春の笑いを辺りに振りまくのでした。


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posted by 語り手たち at 22:48| Comment(0) | お話の国