2017年07月19日

7月のお話


「ナナのアサガオ」


片岡輝・文  花の内雅吉・絵


なかのおじいちゃんが送ってくれた黒いタネから大きなアサガオの花が一輪咲きました。今日はナナの誕生日。つるの先にはバースデイケーキに立てるねじりロウソクそっくりなつぼみが、かぞえるとナナの年と同じ数だけ5つついています。

「おじいちゃんからのプレゼント、よかったわね」とママ。


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「パパがちいさかったときは、アサガオの花のみつをすいに飛んできたダンゴバチやミツバチが花の中にもぐりこむと、花びらすばやく手でつまんで、ハチたちを花の中にとじこめて遊んだものさ」

「ハチはどうなるの?」

「花の中でブンブンワンワンおおさわぎさ」

「さされないの?」

「さされるまえにパット花を開いて逃がしてやるのさ。たまにはさされることもあったなあ。さされたら、いそいでおしっこをつけるんだ。はれあがらないようにね」

「えーつ、おしっこ?」

「よくきくんだぞ。ハッハッハ…」


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パがおしごとにでかけてしばらくしてのこと、ナナがべそをかきながらとんできました。

「ママ、ママ、どうしよう?お花がしぼんじゃったの」

「アサガオは早起きでしょ。だからお日さまがまぶしくてしぼんだのよ。ナナちゃんに面白いことおしえてあげる。しぼんだ花をつんで、花の先を手でつまんで、根元のところから、息を吹き込んでごらんなさい。ポン!ってかわいい音を立ててはじけるわよ」


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ナが思いっきり息を吹き込むと、風船ガムが破れた時のような音がして、しぼんだ花がはじけました。

「今度は、しぼんだ花を集めて、水を入れたコップの中で、ギュギュってしぼってごらんなさい。アサガオ色のすてきな色水ができるわよ」

色水はかんたんにできました。コップをとおして辺りを見ると、世界中がきれいなピンク色に染まっています。ピンク色の空、ピンク色の犬のシロ、ピンク色の弟のケンちゃん

…あ、ケンちゃんが大事なつぼみをむしり取ろうとしています!


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「だめ!ナナのお花とっちゃだめ!ほしかったらケンも自分でタネをまきなさい」

ナナナのけんまくに、ケンはびっくりして走っていってしまいました。

明日は七夕さまです。折り紙を切ってつくった短冊にナナはこう書きました。

「おほしさまにおねがい。あお、あか、ピンク、しろ、むらさき、きいろ、おれんじのはなをさかせてください」

アサガオには、きいろやオレンジの花は咲かないのにね。お星さま、きっと困るでしょうね。


 ぎの日の朝のこと。ナナがバースデイプレゼントにもらったママの手作りのゾウの枕を抱いて寝ていると、ケンが大声をあげながらとびこんできました。

「やったー!やったー!ぼくがまいたタネからおはながいっぱいいっぱいさいた!」

ナナがお庭に飛び出してみると、どこにも新しい花なんか見当たりません。

「ぼくね、きのう、アサガオのところにビー玉のタネをたくさんまいておいたんだ。そしたら、ほら、おはながいっぱい!」

ケンが指さす方を見ると、アサガオの葉っぱのあちらこちらに、まあるい朝露がお日さまの光を受けて、キラキラキラキラとひかり輝いておりました。


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2017年06月10日

6月のお話

「でんでんむしのひみつ」

片岡輝  絵・花の内雅吉



んでんむしは、いったいどこからやっててきて、どこへきえてしまうのでしょうか?雨が降ると、ふってわいたかのように姿をみせ、晴れるといつのまにかいなくなってしま

うのですから、まるで忍者みたいです。

 淳はでんでんむしが大好きです。誕生日が近くなって、テレビが「今日も全国的に雨でしょう」と放送ようになると、朝から庭をかけまわって、でんでんむしを集めてきます。

 淳の秘密の箱のなかには、親指みたいに大きいものから、ごまつぶのように小さいものまで、「ちゅうちゅうたこかいな、ちゅうちゅう…」と、14匹もいるんですよ。


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14匹を、レタスとキュウリでかっています。おかずのサラダをのこしておいて、ジーパンのポケットにつこんで秘密の箱まではこんでくるので、ジーパンはマヨネーズのしみだらけ。今日もポケットからとりだしてでんでんむしに食べさせようとしたとたん、あとをつけていたお兄ちゃんが、「みーつけた。なにかくしてんだ? …なーんだ、でんでんむしか。淳、秘密を教えてやろう。でんでんむしの正体は、宇宙人なんだ。背中にしょってる家は、ほんとは宇宙船なんだぞ。でもだれにもいうなよ」


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ういえば、でんでんむしの渦巻型の家は、お兄ちゃんの本で見たUFOの絵そっくりですし、つつくと引っ込める2本の角は、宇宙服のアンテナみたいです。

 「ぼく、14人も宇宙人を飼ってるんだ。だれにもわたさないぞ」と心に誓ったとき、「この2匹、ちょいとかりるぜ」と、キュウリでお食事中の〈ジャンボ〉と〈でかでか〉をお兄ちゃんがつまみ上げて、あじさいの葉っぱの上に並べました。

「なにするんだよ。かえしてよ」

 「とりゃしないよ。並べて競争させるのさ。宇宙人の大レース!」


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ぎの日は、梅雨にはめずらしく晴れたのに、淳の2つの眼から大雨が降りました。あんなに大事に飼っていた14匹がのこらずカラカラに乾いて死んでしまったのです。レタスもキュウリもしなびてころがっていました。

淳は、箱をかかえて庭へ飛び出すと、穴を堀りはじめました。

「ごめんね。ごめんね。いま、おはかにうめてあげるからね」

すると、お兄ちゃんがやってきて、淳の手をとめて、こういいました。


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「でんでんむしは宇宙人だって教えただろう。宇宙人はそんなにかんたんには死なないんだぞ。宇宙船を空に近いところに並べておくと、だれも見ていないときに宇宙へ帰っていくのさ」

 淳は、14匹のでんでんむしを、ベランダの塀の上に、ていねいに一列に並べ、「ぶじにうちゅうに帰れますように」とおいのりしました。

 夜から朝にかけて、雨が降りました。淳がベランダに出てみると、でんでんむしは、もう影も形もありません。そして、14匹を並べて置いた塀の上には、キラキラ光る14本の銀色の線が、不思議な形を描いて残されているのでした。


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2017年05月15日

5月のお話

「かぜとかけっこしたら」  文・片岡輝  絵・花之内雅吉

 

 さやかの家は、港町の丘の上にたっています。

そこはちょうど、かぜの通り道にあたっており、

春にはあたたかい南の国からの便りが、町一番に

届きます。今ごろは、北のつめたいかぜと南のあ

たたかいかぜがまるで陣取りごっこでもしている

かのように、この丘めざして吹いてきます。

夏になると、磯の香りを乗せた潮風とんできて、

さやかを海へ誘います。秋には、暴れん坊の台風

が落ち葉の手裏剣をとばして渦巻き忍法でせめて

きます。冬は冬で、鼻のてっぺんがツーンと痛く

なって、涙がでるほどつめたい北風が、お日さま

と鬼ごっこをするのです。

 さやかは、だから町のだれよりもかぜとなかよ

しです。名前だって五月のかぜのさわやかさから

とった、さやかなんですって。これはママから聞

いたはなしです。

  

5月の風.jpg


 さやかは、かぜたちが一年中でいちばんおしゃ

べりで、元気で、それでいてやさしい5月がだい

すきです。ほうら、耳をすませてごらんなさい。

うらの竹やぶで「サヤサヤサヤ」って、さやかを

呼んでいます。それなのに、どうしたことでしょ

う? いつもならすぐにとびだしてくるというの

に、今日はシーンと静かです。

 かぜたちがしびれをきらして、どこかほかへ遊

びに行こうとしたちょうどそのとき、ドアがいき

おいよくひらいて…


「ルルンブルブルブルン、ひこうきですよ!」

両手に風車を持ったさやかがとびだしてきて、

坂道へ向かって走りはじめました。


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 「かけっこならまけるもんか!」

 かぜたちがさやかをおいかけます。おいついた

かぜが、さやかの髪の毛を膨らませ、髪の毛がさ

やかの頭の上で、ダンスを踊ります。さやかをお

いぬいたかぜたちが、今度は向かいかぜになって

さやかの耳元で「ヒュンヒュンヒュン」とうなり、

風車をいきおいよく回します。

 坂道の両側で、つつじの花が応援しています。

のっぽの街路樹てっぺんではカラスが、電線には

スズメたちが並んで見物しています。


 さやかとかぜたちは、一気に坂を駆け下り、四

角にさしかかりました。あ、あぶない!よこから

ものすごいスピードで、男の子のジェット機がと

びだしてきて、「どっかーん!」



 

男の子とゴッツンコ.jpg


 二人の眼から星がとびちり、涙がこぼれ落ちま

した。車や自転車でなくてほんとうによかった!

 「ごめんね。ぼくがとびだしたばっかりにきみ

のかざぐるまをぺしゃんこにしてしまって…」

 見ると、ひだりのエンジンのプロペラがクシャ

クシャです。もうあんなにクルクルまわりそうも

ありません。かぜたちもすっかりしょげて、ソヨ

とも吹きません。

 「かわりにこれでゆるしてくれる?」

 男の子はピーピー草でつくった草笛をさしだし

ました。さやかの眼がまあるくなりました。


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 「どうやったらおとがでるの?」

 「おもいっきりいきをすいこんで、やさしくや

さしくふいてごらん」

 教わった通りに吹くと、さやかの息が、草笛を

「ピー」と鳴らしました。

 「うまいうまい、そのちょうし!」


 ピーピー草は、スズメの鉄砲ともいい、穂を取

ると茎が草笛になります。

 「ピーピーピー、ピッーピッーピー…」

 うれしくなったかぜたちが、草笛の音を元気い

っぱい5月の空へはこんで行きます。

 草笛のおれいに男の子にあげた風車も力いっぱ

い回ります。

 「サヤサヤ、ピーピー、サヤサヤ、ピー…」

 さやかは、5月のかぜがだいだいだいすきです。


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posted by 語り手たち at 21:02| Comment(0) | お話の国