2018年06月21日

お話の国

おはなしの国 シリーズ2 詩を語る3


ころがる君は美しい

文と詩 片岡輝


 転がる石は、現在から未来へと時間とともに

移動し続けています。でも、いつかは重力と摩

擦のブレーキによって止まってしまいます。

 遠い昔からじっとそこにあった化石の中には、

太古の時間が止まったまま閉じ込められていま

す。

 生き物もまた、生まれた瞬間から転がる石の

ように、未来へ向かって生き、与えられた命が

尽きるとともに死を迎えます。

 「転がる石には苔が生えない」という諺があ

りますが、死者が永遠の眠りについている墓石

には苔が生えています。

 生きるということは、苔が生えないように転

がり続けるということです。転がって行く先に

は、楽しいこと、うれしいこと、ドキドキする

こと、つらいこと、悲しいこと、ハラハラする

こと…いろんなことが待っています。でも、ど

んなことに出合っても、止まってしまえばおし

まいです。どんなに苦しくても、どんなにスピ

ードが落ちても、転がり続けること、それが、

いきるということなのです。



詩 ころがる石のように


きらきらと光る水面にむかって

アンダースローで石を投げる

石は勢いよく水面にはじかれて

三つ飛んで沈んだ

やがて三つの波紋も波に消えた


山の尾根を歩いていて

足許で石が崩れた

石はちいさくジャンプしながら

斜面を転がって

やがて見えなくなった


重力に逆らって飛ぼうとした石も

重力に導かれて落ちて行った石も

たどり着いた場所で

じっと

石であり続ける


石は波を切って飛んだ時のことを

急斜面を転がり落ちた時のことを

覚えてはいないのだろうか?

動かない石のように生きることはぼくにはできない

いのちのかぎり転がり続ける

Like a rolling stone

Like arolling stone



*この詩は、森山至貴さんの作曲で同声合唱組曲になり、

 楽譜は、全日本合唱普及会から出版されています。





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2018年05月02日

お話の国

おはなしの国 シリーズ2 詩を語る2


ある大人が書いた

「心」への手紙


                      片岡輝 文

                      新田まゆ 絵(刺繍)


なたに初めての手紙を書いています。

 考えてみれば、あなたとは、私が生まれたときからの長いお付き合いなのに、こうしてあなたに向かって私の気持ちを書くのは、今日が初めてのことなんですね。

 まだ、字も書けないほど幼かったころ、あなたと私は大の仲良しでした。あなたが感じるままに、泣いたり笑ったり、すねたり怒ったり、鼻唄を歌ったり叫んだり、しょんぼりしたり威張ったり……気ままにのびのびとふるまっているうちに一日が過ぎて行き、目が覚めると、もう、次の日の朝になっているのでした。そのころは、あなたが私のなかに住み着いていることなど、考えてもみませんでした。


 れは、たしか小学4年生の2学期のこと、クラスに転校生がやってきて、私の隣の席に座ることになり、その子が、私の眼をまっ直ぐに見て、にっこりと笑いかけてきたのです。私の心臓は、100メートルの徒競走をした後のようにドキンドキンと激しく打ち始めました。顔も真っ赤になっていたに違いありません。でも、

私は、みんなに本当の気持ちを見破られないようにツンとそっぽを向いてしまったのです。仲良くなりたい、友達になりたいというあなたの願いに、なぜか素直になれなかったのです。その時から、あなたと私の戦いが始まりました。私は自分の気持ちをおさえ、感じないふりをし、隠して、あなたを無視しました。そうすることが大人になることだと思いこみ、あなたに勝って大人になりました。


も、私は、決して幸せではありません。あなたと仲良くしている子どもたちに出会うと、私が力づくでねじ伏せたあなたが、むくむくと起き上がって、自由に羽ばたこうともがいているのを感じます。もう一度、あなたの声の素直に耳をかたむけて、いろいろなことをやり直してみたいと思います。この手紙と、私の切なる願いが、あなたに届きますように。




こころのありか


こころって どこにあるの

ママにきくと

「さあね、パパならしってるかもしれないわ」

そこで パパにきくと

「はて どこだっけ そう せんせいならおしえてくれる」

そこで せんせいにきくと

「そういうことは ほんをよんで しらべると わかる」

そこで ほんをよむと

「むかしのひとは かんがえた こころは しんぞうにある と

べつのひとは こういった こころは あたまのなかにある と

けれども しんぞうを かいぼうしても

あたまを Xせんで のぞいてみても

こころのありかを つきとめることは できなかった」


そうか そうか そうなのか

こころのありかは なぞなんだ

でも あるってことは たしかだよ

だって だれかを すきになると こころが ざわざわ さわぎだすんだもん

こころ こころ こころさん

どこにあるかは しらないけれど

あなたがあって ほんとうによかった


*この詩は、鈴木憲夫作曲の同声合唱組曲として、音楽之友社から出版されています。


刺繍したくるみボタン.bmp 


●じーじの80歳の誕生を祝って、似顔と80を刺繍しました。

小学2年生の時の作品です。


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2018年04月02日

お話の国

おはなしの国 シリーズ2 詩を語る1


明日輝く星たちのはなし

片岡輝 


明日の語り手3月4日5.jpg    明日の語り手3月4日4.jpg

 明日の語り手たちを育てるプロジェクトが語り手たちの会の創立40周年を記念して、チーム横浜のメンバーを中心にスタートし、34日、詩人の谷川俊太郎さんと作曲家の谷川賢作さんをお迎えして長津田のみどりアートパークで、小学3年から保育士までの12人の語り手が、すばらしい語りを聞かせてくれました。その中の6人は、福島県田村市の女子小学生でした。地元の言葉で地元に伝わる昔話を、かわいい和服を着て語った姿が強く印象に残りました。


明日の語り手3月4日2.jpg


横浜を中心にして首都圏から集まった6人は、ミラン・マラリーク、安房直子、こがようこ、大竹麗子、谷川俊太郎の作品を身振り手振り、表情豊かに語りました。誰もが夜空にきらめく12の星のように輝いていましたが、谷川さんの詩「えをかく」を語った松崎宝夏(小5)さんと、マラリーク作「あなのおはなし」を語った大井田佳穂(小4)さんの二人に「ブルースター」賞が贈られました。二人の語りは、さながら妖精が「語るパントマイム」を演じているかのようで、聞き手をうっとりとさせました。


明日の語り手3月4日1.jpg   明日の語り手3月4日3.jpg


 かねてから、もっと詩を語りで取り上げてほしいと願っていた私は、明日の語り手たちから勇気をもらって、日ごろから書きためている詩を、「お話の国」で紹介して行こうと決心しました。決心とは、少々大袈裟ですが、語り手のみなさんのレパートリーに加えていただけたらこんなにうれしいことはありません。「青い地球にことばの種を!」を種の一つに詩もぜひ加えてください。


 今月の詩は、「わたしが生まれた日」です。


わたしが生まれた日


わたしが生まれた日

その日は朝から雹が降り

おまけに雷まで落ちてきて

わたしがおぎゃあと産声を上げると

天から鬼の子がやってきたと

大騒ぎになったそうな


ところが角も生えていないし

眼に入れてもいたくないほど

可愛い赤んぼだったので

天からの授かりものと

大喜びになったそうな


わたしが思うに

これは祖父か祖母が

作った話に違いない

初孫を抱いて小躍りしている

二人の姿が目に浮かぶ


生まれて今日まで

いろいろなことがあって

父母にはたくさんの

苦労と心配をかけてきた

いまだって口げんかがしょっちゅう


照れくさくってなかなか素直になれなくて

バースデイケーキのろうそくばかりが増えていく

こころのなかで叫びたい

いのちのくさりを受け継いで

たくさんの愛に包まれて

わたしの今日がここにある


*この詩は、神坂真理子の作曲で同声合唱曲として全日本合唱普及会から楽譜が出版されています
posted by 語り手たち at 16:06| Comment(0) | お話の国