ま ど
片岡輝 詩
ちいさいおうちが ありました
おまどがひとつ ついていて
ひらくといつも
あおいおそらが みえました
あおいおそらが ありました
ことりがいちわ とんていて
うたうといつも
ひろいうみが ききました
ひろいうみが ありました
さかながいっぴき およいでいて
はねるといつも
まあるいつきが わらいます
まあるいつきが ありました
おまどがひとつ あいていて
のぞくといつも
かわいいこどもが ねています
「語りの世界 69」
ま ど
片岡輝 詩
ちいさいおうちが ありました
おまどがひとつ ついていて
ひらくといつも
あおいおそらが みえました
あおいおそらが ありました
ことりがいちわ とんていて
うたうといつも
ひろいうみが ききました
ひろいうみが ありました
さかながいっぴき およいでいて
はねるといつも
まあるいつきが わらいます
まあるいつきが ありました
おまどがひとつ あいていて
のぞくといつも
かわいいこどもが ねています
「語りの世界 69」
石つぶて
〜「石コ賢さ」と呼ばれた少年の日の宮沢賢治に
石を拾う
いくつもいくつも拾う
ふくらんだポケットの重みが
舞い上ろうとする少年を
地上にひきとめる
どっどど どどうど どどうど どどう
あまいりんごも吹きとばせ
すっぱいりんごも吹きとばせ
どっどど どどうど どどうど どどう
どんな石にも
時間が息をひそめていると
少年は思う
石は星の原始を覚えているだろうか
風化して砕け散る明日を
予感しているだろうか
イーハトーブの山河で
石を拾った石コ賢さは
ポケットの石を
一つ一つ燃やして
人の心に火を灯し
銀河鉄道で
星へ還っていった
どんな石にも
生命のぬくもりがあると
少年は思う
石は愛の芽生えを覚えているだろうか
憎しみのつぶてとなる明日を
予感しているだろうか
ポケットいっぱいの石を
宙空へ力の限り投げ上げる
石が流れ星となって
降りそそぐその前に
少年よ
地平に向かって走れ
どっどど どどうど どどうど どどう
青いくるみも吹きとばせ
すっぱいかりんも吹きとばせ
どっどど どどうど どどうど どどう
石に興味を 失ったとき
少年はいつか大人になる
負け犬 日本昔話異聞より 作・片岡輝
日本の昔話の中の負け犬の立場からの詩のひとつです
舌切り雀のお宿を訪ね
食べ放題に飲み放題
踊って 歌って ほろ酔い気分
帰りの土産に 出されたつづら
欲張り婆さん ためらいもせず
どれより大きい つづらをえらぶ
つづらは重いし おうちは遠い
そこで どっかと つづらをおろし
宝のなかみ 確かめようと
開けてびっくり 腰抜けた
中から飛び出す 妖怪変化
婆さん あわてて 地面をはって
逃げて もぐって みみずになって
あわれ餌食になったとさ
雀の餌食になったとさ
「語りの世界」