2018年08月01日

お話の国

お話の国 シリーズ2 詩を語る 5


あこがれ

詩と文  片岡輝


昔の人は、青春を「疾風怒濤」に例えました。朝に

ロダンの考える人を気取ったかと思うと、昼にはグ

ランドのアンツーカの上で、9秒の記録達成を夢見

て短距離走法にチャレンジする。夕べにはキーボー

ドをたたいて「世界の終わり」に酔いしれる。精神

も肉体も激しい嵐となって、時の流れに身を任す。

支離滅裂が青春です。

今月はそんなナイーブな少年を描いた「あこがれ」。

男の子の青春についての詩です。


あこがれ


少年が

旅に心をひかれるのは なぜ

未知へのあこがれが

たくましい肉体に

沸き立ち騒ぐから


少年が

夢に命をあずけるのは なぜ

愛へのあこがれで

きよらかな魂を

みたしていたいから


少年が

なかをまるめるのは なぜ

移ろうはかなさを

自らの足音に

聞き取り竦むから


少年老いやすく

学成りがたし

成りがたきは

学のみにあらざれば

友よ

疾く生き 疾く走れ

あこがれの色あせぬ

そのうちに


*この詩は、池辺晉一郎さんの曲で、混声合唱組曲『風の航跡』(音楽之友社)に収載されています。

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2018年07月04日

お話の国


お話の国 シリーズ2 詩を語る4


四季の人

文と詩  片岡輝


1986年に出版された『風の功績』は、池辺晉一郎さんの作曲で8編からなる青春をテーマにした合唱組曲です。その中から1編づつ紹介して行きます。

今月は「四季の人」で、青春の愛についての詩です。


四季の人


夏の陽射しそのままに

まぶしい人

あなたの熱い息吹に

私は陽炎となって

アスファルトの路上でゆれています


澄んだ泉のように

きよらな人

あなたの深い瞳に

私は囚われとなって

愛する苦しみに泣いています


青い木の実そのままに

すっぱい人

あなたの堅い胸に

私はこの耳を寄せて

命の昂りを聞いています

秋の野分そのままに

気まぐれで

樹氷そのままに

透明で

春雨そのままに

やさしくて

私の心を盗んでいった人

それは誰れ?





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2018年06月21日

お話の国

おはなしの国 シリーズ2 詩を語る3


ころがる君は美しい

文と詩 片岡輝


 転がる石は、現在から未来へと時間とともに

移動し続けています。でも、いつかは重力と摩

擦のブレーキによって止まってしまいます。

 遠い昔からじっとそこにあった化石の中には、

太古の時間が止まったまま閉じ込められていま

す。

 生き物もまた、生まれた瞬間から転がる石の

ように、未来へ向かって生き、与えられた命が

尽きるとともに死を迎えます。

 「転がる石には苔が生えない」という諺があ

りますが、死者が永遠の眠りについている墓石

には苔が生えています。

 生きるということは、苔が生えないように転

がり続けるということです。転がって行く先に

は、楽しいこと、うれしいこと、ドキドキする

こと、つらいこと、悲しいこと、ハラハラする

こと…いろんなことが待っています。でも、ど

んなことに出合っても、止まってしまえばおし

まいです。どんなに苦しくても、どんなにスピ

ードが落ちても、転がり続けること、それが、

いきるということなのです。



詩 ころがる石のように


きらきらと光る水面にむかって

アンダースローで石を投げる

石は勢いよく水面にはじかれて

三つ飛んで沈んだ

やがて三つの波紋も波に消えた


山の尾根を歩いていて

足許で石が崩れた

石はちいさくジャンプしながら

斜面を転がって

やがて見えなくなった


重力に逆らって飛ぼうとした石も

重力に導かれて落ちて行った石も

たどり着いた場所で

じっと

石であり続ける


石は波を切って飛んだ時のことを

急斜面を転がり落ちた時のことを

覚えてはいないのだろうか?

動かない石のように生きることはぼくにはできない

いのちのかぎり転がり続ける

Like a rolling stone

Like arolling stone



*この詩は、森山至貴さんの作曲で同声合唱組曲になり、

 楽譜は、全日本合唱普及会から出版されています。





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