2018年07月04日

お話の国


お話の国 シリーズ2 詩を語る4


四季の人

文と詩  片岡輝


1986年に出版された『風の功績』は、池辺晉一郎さんの作曲で8編からなる青春をテーマにした合唱組曲です。その中から1編づつ紹介して行きます。

今月は「四季の人」で、青春の愛についての詩です。


四季の人


夏の陽射しそのままに

まぶしい人

あなたの熱い息吹に

私は陽炎となって

アスファルトの路上でゆれています


澄んだ泉のように

きよらな人

あなたの深い瞳に

私は囚われとなって

愛する苦しみに泣いています


青い木の実そのままに

すっぱい人

あなたの堅い胸に

私はこの耳を寄せて

命の昂りを聞いています

秋の野分そのままに

気まぐれで

樹氷そのままに

透明で

春雨そのままに

やさしくて

私の心を盗んでいった人

それは誰れ?





posted by 語り手たち at 23:49| Comment(0) | お話の国

2018年06月21日

お話の国

おはなしの国 シリーズ2 詩を語る3


ころがる君は美しい

文と詩 片岡輝


 転がる石は、現在から未来へと時間とともに

移動し続けています。でも、いつかは重力と摩

擦のブレーキによって止まってしまいます。

 遠い昔からじっとそこにあった化石の中には、

太古の時間が止まったまま閉じ込められていま

す。

 生き物もまた、生まれた瞬間から転がる石の

ように、未来へ向かって生き、与えられた命が

尽きるとともに死を迎えます。

 「転がる石には苔が生えない」という諺があ

りますが、死者が永遠の眠りについている墓石

には苔が生えています。

 生きるということは、苔が生えないように転

がり続けるということです。転がって行く先に

は、楽しいこと、うれしいこと、ドキドキする

こと、つらいこと、悲しいこと、ハラハラする

こと…いろんなことが待っています。でも、ど

んなことに出合っても、止まってしまえばおし

まいです。どんなに苦しくても、どんなにスピ

ードが落ちても、転がり続けること、それが、

いきるということなのです。



詩 ころがる石のように


きらきらと光る水面にむかって

アンダースローで石を投げる

石は勢いよく水面にはじかれて

三つ飛んで沈んだ

やがて三つの波紋も波に消えた


山の尾根を歩いていて

足許で石が崩れた

石はちいさくジャンプしながら

斜面を転がって

やがて見えなくなった


重力に逆らって飛ぼうとした石も

重力に導かれて落ちて行った石も

たどり着いた場所で

じっと

石であり続ける


石は波を切って飛んだ時のことを

急斜面を転がり落ちた時のことを

覚えてはいないのだろうか?

動かない石のように生きることはぼくにはできない

いのちのかぎり転がり続ける

Like a rolling stone

Like arolling stone



*この詩は、森山至貴さんの作曲で同声合唱組曲になり、

 楽譜は、全日本合唱普及会から出版されています。





posted by 語り手たち at 00:26| Comment(0) | お話の国

2018年05月02日

お話の国

おはなしの国 シリーズ2 詩を語る2


ある大人が書いた

「心」への手紙


                      片岡輝 文

                      新田まゆ 絵(刺繍)


なたに初めての手紙を書いています。

 考えてみれば、あなたとは、私が生まれたときからの長いお付き合いなのに、こうしてあなたに向かって私の気持ちを書くのは、今日が初めてのことなんですね。

 まだ、字も書けないほど幼かったころ、あなたと私は大の仲良しでした。あなたが感じるままに、泣いたり笑ったり、すねたり怒ったり、鼻唄を歌ったり叫んだり、しょんぼりしたり威張ったり……気ままにのびのびとふるまっているうちに一日が過ぎて行き、目が覚めると、もう、次の日の朝になっているのでした。そのころは、あなたが私のなかに住み着いていることなど、考えてもみませんでした。


 れは、たしか小学4年生の2学期のこと、クラスに転校生がやってきて、私の隣の席に座ることになり、その子が、私の眼をまっ直ぐに見て、にっこりと笑いかけてきたのです。私の心臓は、100メートルの徒競走をした後のようにドキンドキンと激しく打ち始めました。顔も真っ赤になっていたに違いありません。でも、

私は、みんなに本当の気持ちを見破られないようにツンとそっぽを向いてしまったのです。仲良くなりたい、友達になりたいというあなたの願いに、なぜか素直になれなかったのです。その時から、あなたと私の戦いが始まりました。私は自分の気持ちをおさえ、感じないふりをし、隠して、あなたを無視しました。そうすることが大人になることだと思いこみ、あなたに勝って大人になりました。


も、私は、決して幸せではありません。あなたと仲良くしている子どもたちに出会うと、私が力づくでねじ伏せたあなたが、むくむくと起き上がって、自由に羽ばたこうともがいているのを感じます。もう一度、あなたの声の素直に耳をかたむけて、いろいろなことをやり直してみたいと思います。この手紙と、私の切なる願いが、あなたに届きますように。




こころのありか


こころって どこにあるの

ママにきくと

「さあね、パパならしってるかもしれないわ」

そこで パパにきくと

「はて どこだっけ そう せんせいならおしえてくれる」

そこで せんせいにきくと

「そういうことは ほんをよんで しらべると わかる」

そこで ほんをよむと

「むかしのひとは かんがえた こころは しんぞうにある と

べつのひとは こういった こころは あたまのなかにある と

けれども しんぞうを かいぼうしても

あたまを Xせんで のぞいてみても

こころのありかを つきとめることは できなかった」


そうか そうか そうなのか

こころのありかは なぞなんだ

でも あるってことは たしかだよ

だって だれかを すきになると こころが ざわざわ さわぎだすんだもん

こころ こころ こころさん

どこにあるかは しらないけれど

あなたがあって ほんとうによかった


*この詩は、鈴木憲夫作曲の同声合唱組曲として、音楽之友社から出版されています。


刺繍したくるみボタン.bmp 


●じーじの80歳の誕生を祝って、似顔と80を刺繍しました。

小学2年生の時の作品です。


posted by 語り手たち at 23:59| Comment(0) | お話の国