2017年03月06日

3月のお話 

「マーチさん さようなら」  作・片岡輝 絵・花之内雅吉


天気がとてもいいある朝のこと、弥生は、ミイラの背中がパックリ割れて、中が空っぽになっているのを見つけました。

「ミイラがかえった! ミイラがかえったのよ! わたしのミイラはどこ?」

大騒ぎをして子供部屋を探すと、一羽の大きなキアゲハが、カーテンのはじに止まって、やさしくやさしく羽を震わせているのでした。去年の秋、お庭のカラタチの枝で見つけた青虫を箱の中に入れておいたら、いつの間にか黄色っぽいさなぎになっていたのがミイラそっくりだったので、そう呼んでいたのです。

     

弥生は、いっとう初めに、お隣のマーチさんを呼んできました。大好きなお友達にキアゲハの赤ちゃんを誰よりも早く見せたかったのです。

 ところが、マーチさんは、なにをどう感違いしたのか、いきなり窓を開けて、キアゲハの赤ちゃんを外へ逃がしてしまいました。

「いじわる! マーチさんのいじわる!」

弥生の眼の涙のレンズに、マーチさんのにっこり笑った白い歯がボォーツと映りました。

「チョウチョさん、空のお家に帰った。よかったね。弥生ちゃんうれしいですね」


のっぽのマーチさんのほっそりとした首を見ていると、弥生は、いつも動物園で見たキリンを思い出します。そういえば、マーチさんのしなやかに伸びた長い長い両足も、どことなくキリンにそっくりで、いかにも走るのが速そうです。

マーチさんは、キリンの生まれ故郷のアフリカからやってきた留学生でした。弥生が生まれて初めて外国人と仲良しになったきっかけは、お正月に弥生がついた羽子板の羽根がお隣の屋根のひさしにひっかかって、べそをかいていた時に、マーチさんがひょいと背伸びして、いとも簡単に取ってくれた時からで、もう2年来の仲良しです。

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  マーチさんの日本語は、たどたどしくておせじにも上手とはいえません。だから、親子ほども年が離れているというのに、気が合うのかもしれませんね。

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 二人はずいぶんいろいろのことをして遊びました。アフリカスタイルの石けりもしましたし、マーチさんが豆のつるを編んで作った輪まわしもしました。弥生が知っている日本の遊びもぜーんぶ。でも、弥生が一番面白がったのはナゾナゾ遊びです。

 マーチさんが出すナゾナゾといったら、どれもとらえどころがなくて、とてもむずかしいのです。

たとえば、こんなふうです。


「あれはなーんだ?」…、こんなへんてこなナゾナゾってあるでしょうか?

「マーチさんって、ずるいずるい。弥生が石≠チてこたえたら、ちがう土≠チていうつもりなんでしょ。弥生がみみず≠チてこたえたら、きっととかげ≠チていうつもりなのよ。そうにきまってるわ!」

「ぼくの国の子どもはね、あれ≠チていえば空≠ニ大地≠フことをいうんだ」

「どうして?」

「なぜなら、目の前には空と大地がどこまでもどこまでも広がっていて、あれ≠チて指させば必ず空と大地に当たるからね」


 空港は、外国へ出発するお客さんでごった返しています。でも、マーチさんのいるところはキリン首のおかげで、たった一目で見つかりました。人ごみをかきわけかきわけ近づくと、マーチさんは弥生をひょいと抱き上げて、やさしく頬ずりして、

「さあ、とっておきの笑い顔を見せてください。お別れに私もとっておきのナゾナゾを一つ出しますから。さあわかるかな? 見えないものってなあんだ?=v

マーチさんを見送った弥生の胸の中に、あたたかいアフリカの風がゴーって吹き込んできました。

「マーチさん、こたえは風≠ナしょ?」

 いつか、この答えをお土産に持って、弥生はアフリカの空のもと、大地に降り立つことでしょう。いつか、きっと、ね。

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posted by 語り手たち at 23:19| Comment(0) | お話の国

2017年03月05日

創立40周年記念事業

NPO法人語り手たちの会 創立40周年記念事業


くちびるにおはなし、こころににじを


語り手たちの会は今年創立40周年を迎えます。会を支えてくださる皆様への感謝と次世代への思いを込めて、4つの事業を企画しました。

一年を通じ、大いに語り合いましょう。

各催しの詳細は会報やチラシ等でお知らせいたします。


2017年4月9日(日)  13:00〜16:15 

北とぴあスカイホール(東京・北区)

花咲く春語り〜異国の友と〜

イギリスのストーリーテラー セーラさんの語りと野間成之さんの紙芝居

 わらべ歌・語り・昔遊びなど 楽しい交流の会



2017年7月2日(日) 13:00〜16:00 

北とぴあ(901会議室)

地球を泣かせないで - 平和こそ命

「ぼくの戦争〜原爆はそら豆がこげるにおい」の著者秋山勝彦さんの語り

ユーモア―あふれるパーソナルストーリー&参加者の語り



2017年10月8日(日) 〜 9日(月・祝)13:00〜16:00 

紅葉のお話万華鏡 

−フクシマから「おはなしフェスタ」

福島県田村市図書館との共催事業

1日目 「あらしのよるに」のきむらゆういちさんの講演会

     語りの分科会

夜語り 星がたり千話一夜

 2日目 あぶくま洞・被災地巡り

 会場 福島県田村市文化センター他



2018年3月4日(日)

青い地球に言葉の種を!−世代を超えて

対談  谷川俊太郎さん×片岡輝さん

ライブ 谷川俊太郎さん&谷川賢作さん

さらに 子どもたちや若手の語り


チラシ↓

40周年会報用3.pdf





posted by 語り手たち at 21:47| Comment(0) | 語りのイベント

2017年02月07日

千話一夜 ご報告

千話一夜  第7回報告  2月5

〜車座になって、語ったり聞いたり〜

 今年度最後の千話一夜、時間も参加人数もいつもよりちょっぴり少なめでしたが、みんなで歌って大いに声を出しました。充実した楽しいひとときでした。

参加者の語り (参加者9名)                      司会 野田登志子

・スイレンと金の糸をつむぐ娘たち(あおいろの童話集)             清水七重
・「走れメロス」安住紳一郎特別授業より(TBSテレビ「ぴったんこカン・カン」吉田孝子
・タケノコごはん(絵本より 大島渚/文 ポプラ社)                築地春江
・歌(雪・春がきた)                                   本郷美智恵
・歌(まりと殿さま・雀の学校)                             前田千恵子
・歌(あわて床屋)                                    永山早苗
・いたちとにわとりとねずみとねこ(聞いた話)                   菅野智子
・数え唄(富貴万福末繁盛)                       菅野智子・野田登志子
・手遊び(チョコレート・もぐら)                            須山優子

(報告:野田)
posted by 語り手たち at 23:24| Comment(0) | 千話一夜